ミルスペックの表面処理|アルミ合金
ミルスペックとは、極限環境でも問題なく使用できる物資調達のために定められた規定です。正式にはMilitary Specificationと呼びます。アメリカの軍用調達規格の総称で、厳しい基準をクリアした材料や品目に適用されます。
アルミニウム合金への表面処理にも、この規格を満たしたものが存在します。この記事ではミルスペックのアルミ表面処理を紹介します。
アルマイト処理(陽極酸化皮膜)
アルマイト処理は、耐摩耗の向上や防食用途の表面処理として最も一般的な処理です。また、この酸化皮膜は電気を通しません。そのため、絶縁性の向上を目的として用いられることもあります。通常は無色ですが、染料の吸着で着色も可能です。
さらに、処理によって皮膜表面にできた微細孔を塞ぐ封孔処理の種類が豊富です。製品仕様に合わせて蒸気法、純粋沸騰水法、酢酸ニッケル法、重クロム酸法などから選択できます。
アルマイト処理のミルスペック
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) TypeII Class1 (非染色)
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) (染色)
硬質アルマイト(硬質陽極酸化皮膜)
一般的なアルマイトよりも耐摩耗性に優れ、硬度が高い皮膜を形成します。しかし、耐熱性、皮膜の柔軟性が低いため、クラックや剥がれが起きやすいです。そのため、高温にならず摺動性・耐摩耗性が求められる部品に使用されます。
硬質アルマイトのミルスペック
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) Type-III Class 1(非染色)
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) Type-III Class 2(染色)
クロム酸アルマイト(クロム酸法陽極酸化皮膜)
外観は灰色で一般的なアルマイトより耐食性や耐熱性に優れています。また、皮膜が柔軟なため、クラックや剥がれが起きにくいです。このため、温度が急激に変化する環境に強く、宇宙航空部品に採用されます。
クロム酸アルマイトのミルスペック
Type-I
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) Type-I Class 1(非染色)
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) Type-I Class 2(染色)
Type-IB
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) Type-IB Class 1(非染色)
・MIL-PRF-8625F(MIL-A-8625) Type-IB Class 2(染色)
化成皮膜処理 イリダイト・アロジン
耐食性に優れており、防錆を目的として使用されます。また、塗装の密着性が高く、下地処理としても使用されます。しかし、硬度と耐熱性に欠けるため、摺動部や高温環境には向いていません。
無色のアロジン1000と有色のアロジン1200があります。どちらも導電性を有しますが、アロジン1000は特に皮膜の電気抵抗が微小で、導電性が必要な部品に採用されます。
化成皮膜処理 イリダイト・アロジンのミルスペック
・MIL-DTL-5541F TypeI Class 1A / MIL-C-5541E Class 1A
・MIL-DTL-5541F TypeI Class 3 / MIL-C-5541E Class 3
Point
ミルスペックは極限環境での使用に耐えることができる材料・品目に適用される規格です。アルマイト・化成皮膜処理にもミルスペックが存在し、部品の要件に応じて適切な表面処理を選定することができます。
アルミ部品加工はStellaMechanicsへ
当社は樹脂・金属の切削加工を行うパーツメーカーです。MIL規格の材料・表面処理での加工にも対応しております。