宇宙用機器に使用する潤滑剤
宇宙用機器への潤滑剤の必要性
宇宙用機器の中には太陽電池パネルの駆動機構やマニュピレータなど、数多くの機構部が存在します。こうした機構は、適切な潤滑が行われていない場合に動作不良によって駆動に必要な荷重が増大したり、最悪の場合動作しなくなる可能性もあります。
そのため、潤滑剤を使用することは非常に重要です。さらに、宇宙空間という特殊な環境にも耐えるものを選定する必要があります。
宇宙用機器に使用する潤滑剤の種類
流体潤滑剤
宇宙空間で使用する潤滑剤に求められる特性として、以下3つが挙げられます。
①真空環境でも蒸発しにくいこと(蒸気圧が低い)
②幅広い温度域において性能が保たれること
③放射線環境下でも劣化しにくいこと
流体潤滑剤の場合、上記①~③を満たすようなMAC(炭化水素油)・PFPE(フッ素油)を基油としたグリースがよく用いられます。
また、下記のアウトガス特性を持つことも求められます。
・TML(※1) 1%以下
・CVCM(※2) 0.1%以下
なお、アウトガス特性はNASAやJAXAのデータベースから検索可能です。
※1 Total Mass Loss:質量損失
※2 Collected Volatile Condensable Materials:再凝集物質重量比
固体潤滑剤
固定潤滑剤は、PTFEやポリイミドのような高分子材料や真空中での摩擦係数が低い軟金属を部品表面に被膜として形成し、潤滑剤としての役割を果たすものです。グリースを使用できないような温度環境・放射線環境でも使用でき、低アウトガスであるため光学機器の近傍でも用いることができます。
一方、デメリットとしては物理的に被膜が摩耗するため寿命があること、摩耗によって摩耗粉が発生する場合があることが挙げられます。
宇宙環境で非常に多く使用される固体潤滑材の一つに二硫化モリブデン(MoS2)が挙げられます。二硫化モリブデンは真空中での摩擦係数の低さや使用温度・範囲・放射線耐性・アウトガス特性に優れています。
しかし、二硫化モリブデンは湿度環境で特性が低下するというデメリットがあります。特に打ち上げ前の保管については十分注意する必要があります。
Point
宇宙用機器の中には多くの機構部があり、これらの正常な動作のために潤滑剤が重要な役割を果たしています。流体潤滑剤・固体潤滑剤それぞれの特徴を把握したうえで使い分けていくことが必要となります。
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