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アウトガスとは|真空中のガス放出

アウトガスとは|真空中のガス放出

アウトガスは主に素材に含まれる水分が原因で起こる現象です。装置の部品の素材には、水や酸素・窒素などの気体が閉じ込められています。真空状態で、これらが真空中に放出されたものをアウトガスまたは放出ガスと言います。

アウトガスの主な原因は、素材成形時の脱脂・予備乾燥が不十分であることです。素材内部に水分が残ってしまうことで、時間経過と共に乾燥する際にガスとして放出されます。

また、プラスチック素材の多くには吸水性があります。そのため、成形時に乾燥が十分に行われていても、空気中の水分を吸収することがあります。例えばナイロンのように吸水性の高い素材はアウトガス発生の可能性が高いです。

アウトガスの影響

宇宙空間で人工衛星などの機器からガスが放出されると、宇宙空間が汚染されます。さらに、この汚染物質が人工衛星のカメラのレンズや部品に付着することで、取得データの劣化や動作不良などを引き起こすことがあります。

また、アウトガスによる意図しない重量減少が、部品の正常な動作を妨げる可能性もあります。

アウトガスの抑止方法

適切な素材選定

アウトガスを抑止する有効な方法は適切な素材選定です。ガスの放出量は、材質や温度などの環境によって異なります。一般的には金属・ガラスのガス放出量が少なく、プラスチックの放出量は多い傾向にあります。

宇宙機器には金属加工品の部品が多くを占めています。近年、宇宙空間で使用できるプラスチック素材の種類が増えています。そのため素材の適切な素材選択は、今後ますます重要な項目となります。

低アウトガス性素材にはPEEKPPSPEKKなどの高機能素材が挙げられます。素材メーカーによって半導体・宇宙業界のアウトガスやイオン不純物についての厳しい基準を満たすグレードが揃えられています。

低イオン・低アウトガス性プラスチック一覧( エンズィンガージャパン株式会社)

適切な素材選定を可能にするのがQCMセンサーです。ガス放出量をナノグラムレベルの精密な測定が可能です。参照用センサーと計測用センサーの2つの発振部を取り付け計測することで、広い温度範囲での測定が可能です。

面粗度の改善

製品の表面には目で見にくい、又は見えない凹凸があります。面粗度が粗いと凹凸の分、表面積が増し付着物質の量も増えることになります。そこで研磨などの表面仕上を行うことで面粗度を高め、余計な汚れが付く余地を減らすことができます。

洗浄

部品の洗浄もアウトガス抑止に必要な作業です。部品には埃や切削油などの不純物が付着しています。これらもアウトガスの原因になり得るので、組立前に十分な洗浄を行います。

真空ベーキング処理

真空チャンバーで真空にした空間を加熱し、製品表面の付着物質をガス化する処理です。温度を上げることで付着物質が活性化します。さらに真空による低圧力で、多くのガスを放出させます。水や有機溶剤、切削油の除去が可能で、洗浄よりも効果が高い方法です。

Point

アウトガスは部品の素材の表面から発生する意図しないガスです。これは宇宙空間の汚染や周辺機器の動作不良を起こす原因となることがあります。最適な素材選定・処理をすることで、ガスの発生を抑えることが可能です。

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