宇宙機の開発フロー
宇宙機の開発フローは、大きく「研究」「開発研究」「開発」「運用」に分けられます。研究・開発研究の完了後、開発段階でモデル製作と審査を経て運用段階へと移行します。
これはNASA(アメリカ航空宇宙局)がアポロ計画を遂行するために採用した【段階的プロジェクト計画法(PPP:Phased Project Planning)】がベースになっています。
PPPとは
宇宙開発のような大規模プロジェクトでは、開発の後戻りは大きなコスト増加を伴います。そのリスクを抑えるために、計画段階から要求を明確にする必要があります。そのために考案されたのがPPPです。
PPPは、プロジェクトを以下のように区分し、各フェーズで必要な作業を段階的に定義・審査してから次のフェーズに進みます。
- Pre-Phase A (概念検討)
- Phase A (概念設計)
- Phase B (基本設計)
- Phase C (詳細設計)
- Phase D (製造・試験)
- Phase E (運用・保守)
- Phase F (運用終了)
プロジェクトのライフサイクルコストは開発早期に固定化される傾向があります。
Nasa systems engineering handbookの例では、Phase Bで15%のコストしか支出されていなくても、この段階で全体コストの75%が確定し、開発後半ほど設計変更に伴うコストが増大するとされています。
モデルの概要
基本設計、詳細設計、維持設計の段階で、それぞれモデルを製作します。そして、これらを審査会で評価し、次の段階へ進みます。
BBM(Bread Board Model)
新規開発要素が高い部分について、その実現性を確認するためのモデルです。これは宇宙用部品ではなく、一般用部品・材料で製作されます。
このモデルの製作後にPDR(Preliminary Design Review:基本設計審査)を実施します。基本設計のまとめとして実施され、設計が条件を満たしているか確認し、詳細設計に進むための判断をします。
EM(Engineering Model)
基本設計に基づいて製作し、各種試験を実施することで設計の妥当性を確認するモデルです。打ち上げ用の実機と同様の品質要求がないため、非宇宙用の同等品で製作されることが主です。
このモデルの製作後にCDR(Critical Design Review:詳細設計審査)を実施します。そして、設計結果・EMの各種試験結果・製造図面などを審査し、詳細設計の妥当性を確認します。
PM(Prototype Model)
詳細設計に基づいて、実機と同一の仕様で製作するモデルです。実機以上の負荷をかけて試験して、設計要求を満たしていることを確認します。
PMの試験後にPQR(Post Qualicication test Review:認定試験後審査)を実施します。そして、試験結果が仕様を満たすことや製造図面を確認します。
FM(Flight Model)
実際に打ち上げられるモデルで、各種試験に合格したPMと同一設計で製作されます。
PFM(Proto Flight Model)
PMとFMを兼ね備えたモデルです。各種試験にて設計を確認したのち、必要箇所をリファービッシュします。
その後、PSR(Pre-shipment Review:出荷前審査)を実施します。そして、受入試験の結果から設計の妥当性が評価されていることや、各工程での品質記録が管理されていることなどを確認します。
※リファービッシュ(Refurbish)
リファービッシュは「修理調整する、改修する」ことを意味します。工業的には、整備して新品状態(再生品)にするという意味で用いられます。
例えば宇宙で一度しか動作しない火工品(爆薬を使用する)のような機器を搭載するPFMの場合、地上試験で駆動させた後に該当する機器をリファービッシュすることで、実際に打ち上げることが可能になります。
Point
宇宙機の開発フローは後戻りによるコスト増大のリスクを最小限にするために構成されています。開発は4段階に分けられ、各段階でモデルの審査会を実施し、必要な要件を満たしているか確認します。
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